「それでは、心当たりをあたってみますね」
「よろしくお願いします」
僕たちが持って帰ってきたベニオウの実だったらきっと欲しがる人が居るよねって事で、商業ギルドの人はルルモアさんに採ってきてくれる人を探してくださいってお願いして帰って行っちゃった。
それじゃあ。俺たちもこれで」
と言うわけで、僕たちも錬金術ギルドに行こうってお父さんがルルモアさんにサヨナラしようとしたんだよ?
「ちょっと待ってください。詳しい場所やなっていた木の様子を教えずにいなくなられても困ります」
でも、ルルモアさんに行っちゃダメって止められちゃった。
「ここですか? う〜ん、流石にかなり森の奥地ですね」
「ええ。でも行って戻ってくるだけなら、それほど時間のかからない距離ですよ」
「はははっ、それはカールフェルトさんたちだから言えることですよ」
僕たちは朝イーノックカウを出て、森の中でベニオウの実を採ってきてもまだお昼ちょっとすぎくらいまでしかかかって無いんだよね。
だけどそれは僕が魔法でベニオウの実を探して、そこまで一直線に向かったからなんだよね。
でもね、それができたのは僕たちがイーノックカウの森に棲んでる魔物たちよりずっと強いからなんだ。
だってさ、こないだの幻獣みたいなのがいる場所だったら、まわりに気をつけながらゆっくり進まないとダメでしょ?
だからもしそんな感じで森の中を進んでたとしたら、もしかすると夜になっても帰ってこれなかったかもしれないんだよね。
「この場所だと、結構腕の立つ冒険者じゃないと実を採って日帰りで帰ってくることは難しいですね」
「そうか? 採取専門の連中ならともかく、貴族が囲ってるような冒険者なら到達するのに苦労するような場所じゃないだろ?」
「そうですね。でもそれは、行って帰ってくると言うだけならです」
ルルモアさんはね、行く事はできてもそこでベニオウの木から実を採ってくるとなるとかなり難しいんだよって。
「このベニオウの木って、実がなってる枝がかなり高い位置にありますよね? そうなると狩りに特化した冒険者じゃ実を採る事ができないんです」
「ああ、なるほど。という事は、足手まといになる採取専門の冒険者を護衛しながら行かないとダメって事か」
「その通りなんですよねぇ」
採取専門の人って、魔物どころか狼とかのちょっと強めの動物にだってやられちゃうんだよね。
ベニオウの実を採ろう思ったらそう言う人を守りながら行かなきゃダメだし、現地についても採ってる間は魔物が近づかないようにずっと周りを見張って無きゃダメなんだ。
そうなると、ただ強いだけじゃダメって事になるでしょ?
だからちゃんとそういう事ができる冒険者さんを雇ってる人を探さないとダメなんだってさ。
「その上、この実に興味を持って、採りに行くためのお金を出してもいいと考える人じゃないとダメでしょ? だから探すのも大変かもしれないわね」
「心当たりはないのですか?」
「う〜ん、真っ先に思いつくのは領主様なんだけどなぁ」
このイーノックカウの領主様は、おいしいものに目が無いんだって。
たとえば遠くの街においしいお料理を出す店があるとするでしょ?
そうすると、お金を出すからイーノックカウにもお店を出してって頼みに行っちゃうくらい、おいしいものが好きらしいんだよね。
だからこの実の話をしたら、絶対に採りに行くって言うと思うんだけど、
「でも領主様だと、動くのは騎士や兵士になるから……」
「ああ、それだと商業ギルドの分を採ってきてほしいとは頼めないな」
でもね、領主様は冒険者さんなんて雇ってないから、もし採りに行くとしたら採取の人の護衛はこの街の騎士様や兵士さんになっちゃうでしょ?
だからもしそうなったら、お父さんの言う通り商業ギルドの分も採ってきてなんて絶対頼めないんだ。
「せめて、狩り専門の冒険者でも取れるような場所になって居たらなぁ。ってそう言えば、カールフェルトさんたちはどうやって採ったんですか? 高い所になっている実を採る技術なんて、持ってないでしょ?」
「ああ。それはルディーンが採りやすいように足場を作ってくれたんですよ」
お父さんはルルモアさんに、僕がクリエイト魔法で階段と足場を作ったから、家族みんなで採る事ができたんだよって教えてあげたんだよね。
「魔法で足場を? なるほど、確かに魔法使いなら材料があればそれくらいできそうね」
それを聞いたルルモアさんはちょっとだけ考えるような仕草をしたんだけど、でもすぐにしょんぼりしちゃったんだ。
「だめね。森の中まで行ってくれるような魔法使い、護衛に特化した高ランク冒険者を探すより難しいわ」
「あっでも、ベニオウの実を採りに行くとなると、やはり魔法使いはいると思うぞ」
「なぜです?」
「だってこのベニオウの実、ルディーンの魔法が無かったら、ここに運んでくるまでにほとんどすべてダメになってたんじゃなか?」
お父さんに言われて、ルルモアさんはそっか! って顔したんだよね。
まだ赤くなってないやつなら大丈夫だけど、真っ赤になっちゃってるベニオウの実はちょっと強めに持っただけで弾けちゃうんだもん。
そんなのを街まで運ぼうと思ったら、フロートボードの魔法が無いと多分無理なんじゃないかなぁ?
「確かにそうね、でもそうなると、やはり領主様が第一候補って事になるか」
「なるほど、領主様なら魔法使いくらい専属で雇ってるだろうからなぁ」
「魔法使いもそうなんだけど、それより確実に運べる方法を領主様は持っているのよね」
「確実な方法?」
「マジックバッグよ。あれに入れて運べば、どんな柔らかいものでも崩さずに遠くまで運ぶことができるわ」
マジックバッグって中は別な空間になってるから、一度入れちゃうと袋をどんなに叩いたって中のものが壊れる事は絶対にないんだって。
でね、領主様はそのマジックバッグを持ってるらしいんだ。
「領主様のマジックバッグは前にブレードスワロー狩りの時に貸したようなものと違ってかなりの量がはいるから、今回カールフェルトさんたちが持ってきた量の2〜3倍を採ってきても簡単に入れる事ができるでしょうね」
「でも、もしそんな貴重な魔道具を使うとなると、ますます商業ギルドの分まで取ってきてほしいなんて頼めなくなるんじゃないか?」
「うっ!」
マジックバッグは貴族様やすっごいお金持ちじゃないと持ってない、とっても大事な魔道具なんだよ。
その魔道具を森の中まで持って行って、もしな失くしちゃったら大変だよね?
だからもしマジックバッグを使ってまで領主様がベニオウの実を採ってきたいって思ったのなら、そんなの売ってくれるはずないでしょ? ってお父さんは言うんだよね。
そしてそれはルルモアさんもそう思ったみたい。
「やっぱり領主様はダメかぁ」
「商業ギルドの依頼を考えると、別の人を探した方が賢いだろうな」
机にぐで〜って倒れこんじゃって、すっごくしょんぼりしちゃったんだ。
「まぁまぁ。商業ギルドの人も言ってたけど、この実を欲しがる人は他にもいるだろうから探せば見つかるって」
「そりゃあ、いるだろうけど……あ〜あ、ルディーン君がこの町に住んでたらよかったのに」
「えっ、僕?」
だからそんなルルモアさんを、お父さんが慰めてたんだよね。
でもそしたら急に僕の名前が出てきたもんだから、びっくりしちゃった。
「だって、ルディーン君なら一人でも簡単に採りに行けるでしょ? 実力的には何の問題もないし、木の横に石材を置いておけば足場だって作れる。それに採った実を運んでくるのだって、魔法を使えば簡単にできるじゃないの」
「ダメだよ! だって僕、一人で森に入っちゃダメって、お父さんたちに言われてるもん」
ルルモアさんはね、僕なら簡単に採ってこれるでしょ? って言うんだ。
でもさ、僕は一人で森に入っちゃダメだから、もしここに住んでたってやっぱり採りにいけないんだよね。
「ん? いや、イーノックカウの森なら問題ないぞ。正直言ってこの森にいる動物や魔物程度なら、うちの村にある森の外の平原にいる動物たちと大差ないからな」
ところがここでお父さんが、イーノックカウの森なら大丈夫だよって言いだしたもんだから、僕はもうびっくり。
「えっ!? いいの?」
「うちの村の周りにいるのは平原にいる動物はな、魔物にこそなっていないが多少は魔力溜まりの影響を受けて強くなってるんだ。ここの森の魔物程度、毎日一人で平原の魔物を狩ってくるお前ならかなり奥まで行かない限り大丈夫だろ」
うちの村の森は危ないけど、イーノックカウの森の魔物は弱いでしょ?
だから僕、一人で狩りに行ってもいい? ってお父さんに聞くつもりだったんだ。
でもその前にお父さんからいいよって言われたもんだから僕、ほんとにびっくりしたんだよね。
「でもまぁ、この街にルディーンが住む事は無いから、ルルモアさんの期待に添える事は無いんだけどな」
だけど僕一人でこの町に住む事なんて絶対ないでしょ?
だからお父さんは、やっぱり僕一人で森に入る事なんてないから、ベニオウの実を採りには行けないねって。
でね、それを聞いたルルモアさんはと言うと、
「そうだと思いましたよ。私も……」
期待した私がばかでしたって言いながら、もっとぐで〜ってなっちゃったんだ。
念願の一人での森の立ち入りがハンスお父さんから許可されました。
まぁそれでもハードルがまるでない訳ではないので、すぐに行けるわけではないんですけどね。
ただルディーン君はジャンプの魔法でいつでもイーノックカウに来ることができるので、一人で森へと狩りに出かける日もそう遠くないでしょうねw